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フランチャイズ契約に関する裁判例の紹介

加盟店の近隣地に他の店舗を新規出店した本部に対する損害賠償請求

コンビニのフランチャイズ加盟店が、近隣地に他の店舗を新規出店した本部に対して、店舗の売上減少に対して代替措置等をとらなかったことは営業努力配慮義務違反等に当たるとして損害賠償を求めた事案(平成29年10月16日東京地裁判決)

<事案の概要>
1 被告Y(本部)は、「A」チェーンフランチャイズシステムを全国展開する株式会社である。原告X(加盟店)は、平成18年、Yとの間でコンビニエンスストア「A」の店舗の加盟店基本契約(フランチャイズ契約)①を締結し、同契約に基づいて、平成19年から、神奈川県横浜市神奈川区菅田町において1号店の営業を開始した。
平成23年、Xは、被告との間でさらに加盟店基本契約②(以下「本件契約」という。)を締結して、同町に2号店(以下、「本件店舗」という。)を開店して、その営業を開始した。

2 本件契約には、以下のとおりの定めが存在する。
「第6条(経営の許諾と地域)
1項 A店の経営の許諾は、Xの店舗の存在する一定の地域を画し、Xに排他的、独占的権利を与えたり、固有の営業地盤を認めたりすることを意味しないものとする。
2項 Yは、必要と考えるときはいつでも、Xの店舗の所在する同一市・町・村・区内の適当な場所において、新たに別のA店を開設し、または他のフランチャイジーにA店の経営をさせることができる。Yは、このような場合においても、原告の営業努力が十分報いられるように配慮する。」(下線、太字は筆者による。)
(以下、6条2項第2文を、「本件配慮規定)という。)

3 Yは、平成26年、本件店舗から約500メートル離れた位置に新店舗(以下、「本件新店舗」という。)を出店させることを予定し、Xに対してその説明を行った。XはYの説明に対して、本件新店舗と本件店舗の商圏が重複しており、本件店舗の売上が大きく減少するおそれがあることから本件新店舗の出店の留保を求めた。
 その後平成27年にかけてXY間で本件新店舗の出店に関して協議が行われたが、折り合わず、Yは本件新店舗の出店を決定し、平成27年6月、本件新店舗を出店した。

4 Yは、本件伸店舗の出店の前後を通じて、本件店舗の駐車場の拡大やアイスケース及び看板の設置、個別店舗販促(廃棄となったデイリー商品の原価のうち、15万円をYが負担し、Xが廃棄の負担をおそれてデイリー商品の発注を絞らないようにするための支援策)の実施などを行った。
また、そのほかにも、本件店舗の売上向上のため、さまざまな支援策を提案・実施した。しかし、Xは、Yからの支援策の提案に対して、本件新店舗の出店によってYとの信頼関係が失われたとして、その施索のほとんどを実施しなかった。

5 本件新店舗の出店後、本件店舗から約150メートル離れた位置に、弁当や惣菜を販売するH店舗が開店するなど、本件店舗の周辺には、競合フランチャイズチェーンの店舗が相次いで出店した。

6 本件店舗の売上高は、平成26年7月頃から、前年比約マイナス5%程度で推移していたが、本件新店舗出店後はマイナス10%~21%の間で推移し、平成28年7月頃から前年比の横ばいで推移した。

7 Xは、売上高の減少について、Yを相手に損害賠償請求を求めて調停を申し立てたが、不成立となったため、本訴を提起した。
Xは、
①本件新店舗の出店が、本件契約第6条1項に違反し、債務不履行もしくは不法行為に該当する、または信義則違反であり、不法行為に該当する。
②本件新店舗出店後の本件店舗の減収についてYが代替措置や緩和措置をとらなかったことが本件配慮規定に反し、債務不履行または不法行為に該当する。
と主張して、Yに対して約900万円の損害賠償を請求した。

<判決の概要>
① 本件契約第6条1項違反の主張について
本件契約第6条1項は、「経営の許諾は、Xの店舗の存在する一定の地域を画し、Xに排他的、独占的権利を与えたり、固有の営業地盤を認めたりすることを意味しないものとする。」と、Xに特定地域における排他的な営業権(いわゆるテリトリー権)が認められない旨が明記されていることからすれば、同条2項にいう「適当な場所」は単にYが適当と認める場所を意味するに過ぎない。したがって、本件新店舗の出店は、本件契約上の債務不履行または不法行為に該当しない。
また、本件新店舗の出店は、Yが採用するドミナント出店戦略に基づくものであり、
Yの経営判断が合理性を欠いていたとはいえない。そのほかYが、本件新店舗の出店の前後を通じて駐車場の拡大やアイスケース及び看板の設置、個別店舗販促の実施に費用を負担したこと、本件店舗の売上向上のための諸施策を実施したことも合わせて考慮すると、信義則違反は認められない。

② 本件配慮規定違反の主張について
Yは、本件新店舗出店の前に、Xに対して出店の必要性を繰り返し説明し、本件新店舗の出店の前後を通じて、本件店舗の売上向上のため、さまざまな支援策を提案・実施したのである。Yのこれらの対応が、本件配慮義務違反にあたるとは認められない。
Xは、Yの提案・実施した支援策はいずれも本件店舗の売上減少の代替措置になり得るものではなかったと主張するが、そもそもYには本件店舗の売上減少を補填する義務は認められず、売上減少の要因として、競合店の開店やXがYの指導に従わなかったことなど、さまざまな事情が考えられることから、本件店舗の売上が回復しなかったことをもって、Yの提案・実施した施策が合理性を欠いていたとはいえない。

<コメント>
1 本判決では、コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンなど、本部が多数のチェーン店を展開するようなフランチャイズ・チェーン・システムにおける本部と加盟店との間で比較的紛争化しやすいと思われる、テリトリー権と
ドミナント戦略及びそれに伴う加盟店の売上の減少と本部の責任が問題となっています。
ドミナント戦略とは、「小売業がチェーン展開をする場合に、地域を特定し、その特定地域内に集中した店舗展開を行うことで経営効率を高める一方で、地域内でのシェアを拡大し、他小売業の優位に立つことを狙う戦略」(株式会社ジェイ・エム・アール生活総合研究所ホームページより引用)のことをいいます。コンビニエンスストアのチェーンシステムの展開において、競業他社との差別化を図るために用いられる経営手法です。
ドミナント戦略により、すでに出店済みの店舗の近隣地に新店舗を開店すると、既存店の顧客が新店舗に流れることになるため、一般的に、既存店の売上は減少することが見込まれます。しかし、中・長期的に、経営効率を高める一方で、地域内でのシェアを拡大していくことにより、既存店も新規店舗も相乗的に売上を向上させていくことが可能です。

2 本件においても、本部であるYは、本件店舗が存在する地域でコンビニエンスストアに対する需要が高いことに目をつけ、競業他社に先んじてドミナント戦略による需要の独占を図ろうという経営判断のもと、本件新店舗の開店を決定しました。
他方で、この地域で既に経営を行ってきたXからしてみれば、本件新店舗の開店は、自らの店舗の売上を減少させる要因となるので、上記のようなドミナント戦略の説明や、今後中・長期的に見れば売る上げ向上につながるというような説明があったとしても、今後の経営に不安が生じることは避けられなかったでしょう。
そして実際に、本件新店舗の開店後は本件店舗の売上は減少し、予定していたようなドミナント戦略の効果は見られないまま本件訴訟の提起に至ってしまっています。

3 本件訴訟では、Xは、上記①、②のように主張しましたが、まず、①については、本件契約第6条の文言を素直に読めば、YがXにテリトリー権を保障していないことは明らかですので、本件新店舗が本件店舗の近隣に位置するという事情のみでYに契約違反が認められることはないでしょう。また、本判決でも認定されているように、本件新店舗の開店の後、競合他社が近隣地に相ついで店舗を開店させていることからして、本件新店舗の出店というYの経営判断は間違っていなかったというべきでしょう。
次に、②について、本件配慮規定に基づいて、YがXに対して一定の配慮義務を負うこと自体は認められそうですが、問題はその内容としてXがYに何を要求できるのか、という点です。
この点について、本判決では、Yが本件新店舗の開店の前後を通じて、Xに対してさまざまな支援策を提案・実施していたと認定して、Yに義務違反または不法行為は認められないと判示しました。
  Xは、本件配慮規定に基づいて、Yに対して、本件店舗の売上減少に対する代替措置または緩和措置を要求していましたが、本判決はそもそも、Yに本件店舗の売上減少補填する義務はないと明示しています。Xにテリトリー権が認められていない以上、通常テリトリー権の侵害が認められた場合に補填すべき売上減少についてもその補填を請求することが認められないことは当然ともいえます。
つまり、Xが本件配慮規定に基づいて請求できる内容としては、既存店の売上減少を食い止め、売上を向上させるために必要な営業上の改善点や、広告宣伝活動等に尽きると考えられ、これらはすでにYが提案・実施したさまざまな支援策によってすべて履行されています。結局、これらの支援策の実施を拒否したのはXの責任であって、これ以上の代替措置等を法律上Yに要求することはできない、ということでしょう。

4 今回は、本部側の経営判断が合理的であったとの本部側に有利な証拠が揃っており、また、本部が既存加盟店に対してそれなりのコストを割いて支援を行っていたことから、結論としては加盟店側の敗訴をいう結果は導きやすい事案だったと思われます。
しかし、今回と同様に、ドミナント戦略による新規店舗の出店により、既存加盟店の売上が減少したというようなケースで、新規店舗の出店が本当にドミナント戦略として合理性のあるものであったか微妙な場合や、本部が既存加盟店に対して何らの説明も配慮もすることなく、経営面での支援も特になく新規出店を行ったなどといった場合には、異なる判断がされる可能性もあります。
経営判断の前提として、本部や加盟店との法律関係について、紛争化した場合の法的判断に対する見通しを持つことは重要だと思いますので、現在お悩み事を抱えであるとか、今後の紛争予防的観点から法的な見通しを知りたいとお考えの本部または加盟店の方は、法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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